2018年1月16日火曜日

今週の今昔館(94) 住吉反橋 20180116

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(3)

 今回は、新シリーズ「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の3回目になります。1月ということで、毎年初詣で賑わう摂津の国の一之宮「住吉大社」をご紹介することにします。

■住吉反橋(芳瀧画)
 住吉大社と言えば反橋(太鼓橋)が有名ですが、浪花百景にも反橋の錦絵があります。
 住吉大社を象徴する反橋は急こう配の美しい反りを持ち、別に太鼓橋とも呼ばれます。擬宝珠のある見事な石柱木造橋で、淀君の寄進を受け、豊臣秀頼が片桐且元に命じて再興したと伝えられます。
 たびたびの修復作業は船大工の奉仕で行われていたといわれますが、石造りの橋柱や梁は別として木製の床板や桁の維持管理は難しかったようで、享和元年(1801)に修復される以前は歳久しく朽ちて石杭のみ残り、橋とは名ばかりの状態になっていたといわれます。
 以前は渡りやすくするための横木がなく、渡橋は困難でしたが、「反橋を渡るだけでお祓いになる」ということから、懸命に上り下りする参詣者も多かったといわれます。その後も時おり修復が加えられ、現在に至っています。

浪花百景「住吉反橋」(大阪市立図書館蔵)

■住吉本社(国員画)
 2枚目は本殿です。絵図のタイトルは「住吉本社」となっています。住吉三神と、神功皇后を祀る摂津一之宮で、4つの神殿を持ち、祭神は、一の神殿は底筒男命、二の神殿は中筒男命、三の神殿は表男筒命、四の神殿は神功皇后。住吉大社のホームページでは、「第一本宮」~「第四本宮」となっています。古来より国家鎮護、船舶守護、祈雨、和歌神、武道神としての信仰が厚く、庶民に至るまで住吉詣は四天王寺詣とともに最も親しまれた参詣でした。
 「住吉造(すみよしづくり)」の4棟の本殿が海に向かって西面し、15世紀までは20年ごとに遷宮していたようですが、現本殿は文化7年(1810)建立です。「住吉造」は神社建築史上最古の様式の一つといわれ、4棟いずれも国宝建造物に指定されています。市内で唯一の国宝建造物です。
 本殿を囲むように、摂社、末社、名所旧跡が多く、大小の祭祀は年に75回に及び、その中でも特に2月の祈念穀祭、6月の御田植神事、7月の夏越大祓神事、10月の宝の市、11月の新嘗祭は著名で多くの参詣者で賑わいをみせています。

浪花百景「住吉本社」(大阪市立図書館蔵)

■住吉五大力(芳瀧画)
 3枚目は「住吉五大力」。住吉大社には20を超える摂社・末社が集まります。そのうち神仏習合の思想から建立された神宮寺は平安時代から文献にも表れ、江戸時代には仏堂・僧堂を備えていました。
 宝蔵には住吉明神自らが描いたと伝えられる五大力菩薩の画像五幅を安置していたと伝えられ、宝蔵前には百度石となっている五大力碑があり、厄除けほか願掛けなどの民間信仰に支えられていました。「五」「大」「力」の文字の書かれた石を3つ集めるとお守りになるといわれています。
 神宮寺は天平2年(730)あるいは天平宝字2年(758)の創建といわれ、藤原純友の乱平定の祈祷もここで行われるなど長い歴史を持っていましたが、明治に入り神仏分離・廃仏毀釈の波の中で姿を消しました。現在はその跡地に石碑が建っています。

浪花百景「住吉五大力」(大阪市立図書館蔵)

■浅澤の弁財天(芳瀧画)
 4枚目は「浅澤の弁才天」。住吉大社から東南に2丁ほどのところにある場外末社で市杵島姫命ほかを祀る浅澤神社。姫命が弁才天に結び付けられて女性守護の神として信仰を集めました。池中には弁才天の小祠が祀られています。錦絵に描かれた石碑と柳が現在も残っていて貴重です。
 細江川が流れ込む浅沢小野と呼ばれる一帯は、池沼の多い低湿地で、古来、杜若の名勝。和歌の名所として知られ歌枕にもなっており、万葉集に「住吉の浅沢小野の杜若衣にすりつけ着む日知らずも」と詠まれていますが、すでに江戸時代には途絶えていました。宝暦13年(1763)地元の人々が新たに杜若を植え直して往時を再現したといわれます。現在、杜若は住吉区の花に指定されています。

浪花百景「浅澤の弁財天」(大阪市立図書館蔵)

 次に、古地図で住吉大社あたりの変遷を見てみましょう。江戸時代天保年間の「浪華名所獨案内」では、地図の右端(南端)に「住吉」が押し込まれていて、本殿と松並木、高灯籠が描かれています。大坂三郷からは距離は離れていますが名所としては欠くことができなかったのでしょう。

「浪華名所獨案内」(「津の清」蔵・上が東です)

 文化3年(1806)発行の「増修改正摂州大阪地図」とグーグル空中写真を合成した下の図を見ると、地図の範囲は茶臼山付近までで、住吉大社は含まれていません。

「増修改正摂州大阪地図」とグーグル空中写真の合成
(ラムゼイコレクションより)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」では、当時の大阪市域が対象エリアとなっていますが、その外にある住吉神社は、今宮の南側に唯一の挿絵として挿入され描かれています。4つの本殿と反橋が位置関係も含めて正確に描かれています。また阪堺電車の住吉鳥居前停留所、南海本線住吉駅も描かれています。パノラマ地図の精度の高さが伺えます。

「大阪市パノラマ地図」(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年の「大大阪観光地図」では、住吉大社は大阪市域に編入された以降で、「住吉神社」と「住吉公園」が名所として挿絵が入っています。阪堺電車、南海本線のほか、南海高野線も描かれています。

「大大阪観光地図」(日文研蔵)

 最後に、最新のグーグルの空中写真とマップを見てみましょう。住吉大社、大海神社、生根神社の境内の樹々と、住吉公園の緑やグラウンド、細井川の流れもよくわかります。

グーグル空中写真
グーグルマップ

 今回は、「浪花百景」の住吉大社とその付近の計4枚をご紹介し、江戸時代から最近までのまちの変遷を見てきました。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」開催中です

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)




〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール
参加費:無料
定員:100名(要事前申込、先着順)
申込み方法:インターネット、又はハガキ・FAXにて。氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号、参加人数(4名まで、お連れ様の名前も記載)を記入。
インターネットからのお申込みはこちらから
≫ https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33011(住まい・まちづくり・ネット)

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。



〇今週のイベント・ワークショップ

1月17日(水)~20日(土)、22日(月)、24日(水)~27日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

1月21日(日)、28日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

1月20日(土)
企画展イベント ワークショップ 『障子に親しもう』

日本家屋にはおなじみの障子。
破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
14:00~、先着10名、無料(高校生以上の方は常設展の入場料が必要)
8階ロトンダにて開催

1月21日(日)
イベント 座敷舞

山村流の立ち方が華やかな舞を披露します。
出演:山村若女 ほか
14時~15時

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

1月27日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『鬼のお面作り』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します。

1月28日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音色をお楽しみください。
出演:竹本旭将 他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30~15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



0 件のコメント:

コメントを投稿