2017年11月28日火曜日

今週の今昔館(87) からくり錦絵「梅田ステン所」 20171128

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(21) からくり錦絵「梅田ステン所」

 今回は、大阪くらしの今昔館の8階近代展示室に入って、すぐ左手にある「からくり錦絵」の3枚目、右端の「梅田ステン所」をご紹介します。


 梅田ステン所(初代大阪駅)は、明治7年(1874)5月11日に大阪駅~神戸駅間の鉄道開通と同時に開業しました。駅舎はゴシック風の赤煉瓦造り2階建てで現在の大阪駅よりも西の大阪中央郵便局旧局舎付近に当たる場所にあり、周辺は民家がわずかにあるだけで田圃が広がっていました。
駅のある場所は明治22年(1889)の市制施行時における大阪市域にも含まれず、明治30年(1897)まで西成郡曽根崎村に属していました。市街地を避けて建設されたことがわかります。

堂島に当初計画された予定地と初代梅田ステンショ
(「大阪駅の歴史」より)
初代大阪駅(「大阪駅の歴史」より)
 当初の計画では市街地に近い堂島付近に頭端式(阪急梅田駅、南海なんば駅のようなターミナル型の駅)で建設される予定でしたが、設置場所は曽根崎村の梅田に変更されました。堂島から梅田へ変更されたのは、将来東へ線路が延伸された際に京都駅 ~神戸駅間の直通運転に都合が良いよう、頭端式を採らず、通過式の駅構造にするためだと言われています。鉄道黎明期に頭端式ホームを採用した横浜駅がその後の時勢変化で二度移転を強いられたことからしても、折り返しを要さない東西直通運転を可能にしつつ市街地に駅をできるだけ近づけさせる構造にした大阪駅には、先見の明があったといわれることもあります。それは、明治末期に山陽鉄道や九州鉄道といった大私鉄が国有化された後、西日本各地から東京への直通運転の実現が容易となり、利便性を高めたという点でも大いに役立つこととなりました。
大阪駅がターミナル型でないことを惜しむ声もありますが、東京駅、品川駅、上野駅も、すべて通過式の駅に変わってきています。汽車の時代から電車の時代になって、折り返しよりも通り抜けの方が便利で効率的ということでしょうか・・・?


初代大阪駅(「大阪駅物語」より)
初代大阪駅(「大阪駅物語」より)

 開業当初、大阪駅は「梅田駅」「梅田ステーション」「梅田すてん所」などと呼ばれていましたが、阪神・阪急や貨物駅の梅田駅が開業すると、次第に大阪駅のことを「梅田駅」などと呼ぶことはなくなりました。

 次に、古地図で大阪駅周辺の変遷を見ていきましょう。
まず、江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」では、市街地の北の端に「曽根崎新地」「北野」の地名があります。天満堀川の傍には「ゴモク山ト云」という文字もあります。


「浪華名所獨案内」の大阪駅あたり(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の「天保新改攝州大阪全圖」では、曽根崎村の北側には水路が流れていて、地図中央左寄りに「梅田墓」の文字があります。

天保8年発行の「天保新改攝州大阪全圖」の大阪駅あたり(日文研蔵)

 明治5年(1872)発行の「大阪市中地區甼名改正繪圖」を見ると曽根崎村に「新建屋」「新屋」の文字が何か所かあり、農地の中に家が建ち始めています。「梅田三昧」の字があり、川には「十三渡」の字も見えます。

明治5年発行の「大阪市中地區甼名改正繪圖」(日文研蔵)

 明治15年(1882)発行の「大坂明細全図」には、「梅田ステーション」が描かれ、「神戸行鐡道」、「西京行鐡道」の文字があります。駅の西側には「明治十一年新堀」と書かれた水路が描かれ、「出入橋」の文字も見えます。
駅の東側の「ステーショ道」は桜橋、渡辺橋につながっており、駅が現在よりも西に位置していたことが分かります。

明治15年発行の「大坂明細全図」(日文研蔵)

 大正元年(1912)発行の「實地踏測大阪市街全圖」を見ると、大阪駅の前に市電が通り、西に阪神電車、東に阪急電車の梅田駅ができています。阪急電車は国鉄を高架で跨いでいます。

大正元年発行の「實地踏測大阪市街全圖」(日文研蔵)

 大正13年(1924)発行の「大阪市パノラマ地図」を見ると、駅の北側に「大阪駅構築予定地」と書かれ、貨物駅の整備が始まろうとしています。阪急電車が国鉄を跨いでいる様子が描かれています。阪神電車の地上駅も描かれています。

大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」(大阪くらしの今昔館蔵)


 昭和12年(1937)発行の「大大阪観光地図」では、国鉄線が高架になり、城東線(現在の大阪環状線)は電車化しています。阪急線は地上線になり、国鉄線の下をくぐっています。この工事は、昭和9年5月31日の深夜、一晩で行われました。
 昭和8年には地下鉄の梅田(仮駅)~心斎橋が完成し、大大阪観光地図にも反映されています。駅前には「市電案内所」があります。このあたりは、映画「大大阪観光」と対応しています。


昭和12年発行の「大大阪観光地図」(日文研蔵)

 切替直前の大阪駅と阪急梅田駅の様子です。このあと、一晩で省線は高架に、阪急は地上線に切り替えられます。この写真には、工事中の地下鉄梅田駅も写っています(阪急百貨店の右側)。この時期には大阪駅周辺で大工事が進められていました。詳しくは、改めてご紹介します。

切替直前の大阪駅周辺(「大阪駅の歴史」より)


 最後に、今昔マップ3の地形図によって、大阪駅周辺のまちの変遷を見てみましょう。
 左上は明治42年で、大阪駅の北側には農地が広がっています。その中に、工業学校(現在の大阪市立大学工学部)があります。阪急電車は、梅田駅を出た後、省線(国鉄)を高架で跨いでいます。
 右上は昭和7年、駅の北側で梅田貨物駅の建設が進んでおり、入り堀が国鉄の北側まで伸びています。工業学校は立ち退いています。阪急電車は、淀川の鉄橋まで高架線になっています。高架線に沿って東側には地上を北野線が走っています。
 左下は昭和42年。梅田貨物駅は最盛期を迎え、入り堀が埋め立てられて建屋になっています。阪急電車は昭和9年の切替工事で省線の下をくぐり、阪神電車は、昭和14年に東へ延伸されて地下駅になっています。

 右下は、最近の国土地理院地図。阪急梅田駅は、JR(国鉄)線の北側に移転し、うめきた1期と大阪駅北ビルができています。


明治42年、昭和7年、昭和42年と最近の地形図
(今昔マップ3)

 からくり錦絵は、造幣寮、心斎橋、梅田ステンショの3枚で構成される「からくり仕掛けの錦絵」で語る大阪の文明開化です。

からくり錦絵の解説板

 真ん中の赤いボタンを押すと、ブザーが鳴って演出が始まります。明治時代に入って、文明開化のなかで江戸時代の風景がどのように変わってきたのかを「からくり仕掛け」で見えるようになっています。

赤いボタンを押す前の状態
3枚の演出が終了した状態

 今回は、「からくり錦絵」の3枚目、右端の「梅田ステン所」をご紹介しました。これで、からくり錦絵は完結です。



〇次回の企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」
 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。
本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。
さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)

〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール
参加費:無料
定員:100名(要事前申込、先着順)
申込み方法:インターネット、又はハガキ・FAXにて。氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号、参加人数(4名まで、お連れ様の名前も記載)を記入。
インターネットからのお申込みはこちらから
https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33011(住まい・まちづくり・ネット)

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。


〇今週のイベント・ワークショップ

11月29日(水)~12月2日(土)、4日(月)、6日(水)~9日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

12月3日(日)、10日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

12月03日(日)
イベント 邦楽演奏会

三味線、地唄、箏、尺八による邦楽の演奏会です
14時~15時
出演:菊聖公一、中萩あす香、ジェシー逅盟

12月09日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『はたき作り』

①13時30分~ ②14時30分~
当日各回先着10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

12月10日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

イベント 町家寄席-落語“らくてん会”
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
14時~15時30分頃
出演:らくてん会

町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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