2017年8月29日火曜日

今週の今昔館(74) 古市中団地 20170829

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(8) 古市中団地 -計画的団地の開発-

 今回は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「古市中団地 -計画的団地の開発-」の模型をご紹介します。
古市中団地(住まいの大阪六景)

 戦災復興とこれに続く高度経済成長に伴う都市への人口集中に対応するため、数多くの公共住宅団地が建設されました。
 なかでも、昭和28年(1953)度から城東区古市の一角にある軍用地跡で建設が始まった市営古市中団地は、戦後の計画的団地開発のモデルとして全国的に大きな反響を呼びました。住戸・住棟計画・配置計画のみならず外構や色彩にも新しい試みが行われ、さらに学校や道路・公園なども含めた街全体を計画の対象とした計画の総合性が注目されました。


 設計者の久米権九郎氏がドイツ留学のおり、各地で街の美しさに大いに感銘を受け、古市中団地の設計にあたって変化に富んだ美しい街をつくることに主眼をおいたといわれます。土地区画整理事業に基づく格子道路や都市計画公園に大胆な変更を加え、通過交通の無い有機的な曲線を用いた道路パターンと街区構成が採用されました。住棟の階数は2階から5階まで変化を持たせ、アクセスも北入りと南入りを組み合わせています。給水塔も団地のシンボルとして造形上の配慮を行い、ジャングルジムなどの子どもの遊具にも意匠を凝らしています。立面図のパネルには給水塔も描かれています。水洗トイレやバルコニーなど近代的設備を備えた各住戸では新しいライフスタイルの暮らしが始まり、周囲からはあこがれの住宅として見られたといわれています。

 近代都市住宅年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。古市中団地もあります。
 3階建ての住棟のバックには、年表に食い込むように給水塔も描かれています。給水塔のスケール感がよくわかります。


 給水塔の後ろに描かれている建物は、日本住宅公団の西長堀アパートです。
 西長堀アパートは、初期の公団住宅で特に注目されるもので、東京の晴海アパートと対をなす都心部高層住宅の試みの一つです。昭和33年に完成した地上11階地下1階、単身者向け住宅50戸を含む263戸の店舗併存住宅で、約300坪の貸店舗と約150坪の貸倉庫が1階および地階に配置されていました。その巨大な姿から「マンモスアパート」の愛称で呼ばれていました。入居者には郊外団地とは異なる都市型の生活様式の持ち主が多かったと考えられ、作家の司馬遼太郎さんやデザイナーの鴨居羊子さん、森光子さんや野村克也さんなどの著名人も暮らしておられました。2016年2月に、建物のリフレッシュ工事とともに新しい企画の住戸プランも登場し、58年目の再デビューをしています。


古市中団地(背景に給水塔と西長堀アパート)

 次の写真は、1948年(昭和23年)に米軍によって撮影された航空写真です。中央の城北川の東にあるドーム状の建物は1937年(昭和12年)3月に完成した大阪大国技館(大阪関目国技館)で、当時の両国国技館よりも大きい施設でした。しかし、オープン間もない1941年(昭和16年)には戦局の悪化から相撲興行が中断。結果的に4年で7回の準本場所を開催しただけで、戦時中は建物は倉庫に転用されました。戦後米軍に接収された後、その跡地は日本住宅公団(現UR都市機構)の住宅になっています。その東側の一帯が古市中団地の敷地で、軍用地の跡となっています。格子状に区画整理された道路となっていたことがわかります。
米軍撮影の航空写真(昭和23年・国土地理院)
 最後に、古市周辺の市街地の変遷を今昔マップ3で見てみましょう。左上は明治41年。一面が農地になっていて、水路が描かれています。右上は昭和22年。城北運河(城北川)が建設され、川沿いには丸い建物が描かれ、「旧国技館」の文字があります。左下は平成7年。古市二丁目の文字のところが古市中団地で、そのほか、UR都市機構の団地や、城北川沿いの工場跡に建設されたマンション群も描かれています。右下は、最近の航空写真で、建て替え後の古市中団地が写っています。
明治41年・昭和22年・平成7年の地形図、最近の航空写真の古市付近(今昔マップ3)


 今回は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「古市中団地 -計画的団地の開発-」の模型をご紹介しました。解説は、「まちに住まう-大阪都市住宅史」を参考にしました。


〇企画展示「夏休みだよ!家電採集 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」~残りわずかとなりました~

 平成29年7月29日(土)~8月31日(木)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

 大阪くらしの今昔館ではおなじみとなった昭和レトロ家電の展覧会が、今年は夏の開催となりました。本展では、増田健一氏が20年以上にわたり収集してきた昭和レトロ家電コレクションから、昭和30年代の懐かしい家電やアイデアあふれる珍しい家電をよりすぐり、約150点を公開します。また今回は家電のほかに、ハミガキ、洗剤など当時の生活雑貨やそのポスター等も展示します。夏の一日、昭和レトロ家電の世界をどうぞお楽しみください。
詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/kikakutenji.html



〇今週のイベント・ワークショップ

※9月4日(月)~8日(金)は、展示替えのため休館です。


8月30日(水)~9月2日(土)、9日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

9月3日(日)、10日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

9月3日(土)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

9月9日(土)
ワークショップ 『張り子のお面を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

9月10日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

イベント 第12回子ども落語大会
開催日時 平成29年9月10日(日) 午後12時~17時(予定)
開催場所 : 大阪くらしの今昔館 9階常設展示場 薬屋座敷


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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