2017年8月1日火曜日

今週の今昔館(70) 北船場 20170801

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(4) 北船場 -旧大坂三郷の近代化-

 今回は「住まいの大阪六景」のひとつ「北船場 -旧大坂三郷の近代化-」を取り上げます。
 船場(せんば)は、大阪市中央区の地域名で、大阪市の中心業務地区にあたり、大坂の町人文化の中心となったところです。
 船場は河川と人工の堀川に囲まれた(囲まれていた)四角形の地域であり、
東端 - 東横堀川 (阪神高速1号環状線南行き)
西端 - 西横堀川 (阪神高速1号環状線北行き。1962年埋立)
南端 - 長堀川 (長堀通。1964年埋立)
北端 - 土佐堀川
の東西1km、南北2kmのエリアです。江戸時代の町組の名残で、本町通の北を北船場(きたせんば)、本町通の南を南船場(みなみせんば)と呼び分けることもあります。東は上町、南は島之内、西は下船場、北は中之島に接しています。

 船場の街区は基本的に40間四方の正方形で、街路は碁盤目状に直交しています。大坂城の西に位置することから東西方向が竪(たて)となり、東西方向の街路を通(とおり)と称しています。計23本あり、当初の幅員は4.3間(約8m)に設定されていました。一方、南北方向は横(よこ)となり、南北方向の街路を筋(すじ)と称しています。計13本。当初は補助的な街路とされたために幅員は3.3間(約6m)と通に対して狭く設定されていました。
 東西の通りを挟んで北と南で1つの町を形成しています。両側町と呼ばれる形態で、町の名前は通の名前と一致していました。

 伝統的な町家が建ち並んでいた明治時代の旧大坂三郷は、東西の通、南北の筋で構成される江戸時代以来の狭隘な道路が、近代化を進めるうえで大きな障害になっていました。
 そこで「軒切り」と呼ばれる都市改造が実施されました。もともとは町家の正面の一部を切り取って本来の道路の幅員を回復するものですが、市電の敷設工事や都市計画に基づく道路拡幅も軒切りと総称され、明治の終わりから昭和にかけて行われました。
 堺筋などは市電の敷設に合わせて大きく拡幅されました。東西の通も軒切りによって拡幅されました。
 模型は、堺筋を挟んだ道修町と平野町の一角の昭和7年(1932)の様子で、市電の敷設に合わせて拡幅された堺筋と、平野町通の拡幅前後を表わしています。
北船場-旧大坂三郷の近代化-(住まいの大阪六景)

 豊臣時代から江戸時代にかけて形成された船場の様子とその後の変遷を、古地図で見てみましょう。

浪華名所獨案内(天保年間)の北船場(「津の清」蔵)
天保新改攝州大阪全圖の北船場(国際日本文化研究センター(日文研)蔵)
大阪市内詳細図(大正3年)の道修町・平野町付近(日文研蔵)
大阪市パノラマ地図(大正13年)の道修町・平野町付近
(大阪くらしの今昔館蔵)
 實地踏測大阪市街圖(大正14年)の北船場(日文研蔵)
最新大大阪市街地図(昭和10年)の北船場(日文研蔵)
明治41年・昭和4年・昭和42年の地形図、地理院地図の北船場
(今昔マップ3)

 明治時代になって梅田、難波、天王寺に鉄道駅ができ、南北の交通量が増えたことから、市電の敷設と合わせて堺筋と四つ橋筋が拡幅され、さらに、昭和時代になって地下鉄の建設と合わせて御堂筋が整備されたことから、現在では南北の筋のほうがメインストリートとなっています。

東西の通(メインストリート)と南北の筋で構成される「両側町」

市電の敷設に合わせて拡幅された堺筋と軒切り前後の平野町通

 軒切りを契機に大阪の都市景観は大きく変貌し、三階建ての町家や、階高が高く箱軒と呼ばれる軒蛇腹を大きくした町家、洋風建築などの新しい形式の建物が現れてきました。また、町家の内部も、店の間を板敷きの事務所とするなど、生活様式や商売の形態の近代化に対応した改造が見られました。

市電敷設に合わせて拡幅された堺筋と軒切り前後の平野町通

 「近代都市住宅年表」には、小西儀助商店と藤澤商店の立面図が描かれています。どちらも、大阪市東区(現:中央区)道修町(どしょうまち)にありました。コニシボンドで有名な小西儀助商店は、立面図では3階建てとなっていますが、関東大震災の後に安全対策のために3階部分が撤去されました。現存しており国の重要文化財に指定されています。また、平野町の町家の立面図もあります。
小西儀助商店(「近代都市住宅年表」)
堺筋に面する小西儀助商店
藤澤商店(「近代都市住宅年表」)
藤澤商店の内部
(店の間が板敷になり事務所として利用されている)
平野町の町家(「近代都市住宅年表」)

 今回は、「北船場-旧大坂三郷の近代化-」の模型と、都市住宅年表に描かれている小西儀助商店と藤澤商店、平野町の町家をご紹介しました。解説は、「住まいのかたち 暮らしのならい-大阪市立住まいのミュージアム図録-」を参考にしました。



〇企画展示「夏休みだよ!家電採集 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」~開催中です~
 平成29年7月29日(土)~8月31日(木)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

 大阪くらしの今昔館ではおなじみとなった昭和レトロ家電の展覧会が、今年は夏の開催となりました。本展では、増田健一氏が20年以上にわたり収集してきた昭和レトロ家電コレクションから、昭和30年代の懐かしい家電やアイデアあふれる珍しい家電をよりすぐり、約150点を公開します。また今回は家電のほかに、ハミガキ、洗剤など当時の生活雑貨やそのポスター等も展示します。夏の一日、昭和レトロ家電の世界をどうぞお楽しみください。
詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/kikakutenji.html



〇今週のイベント・ワークショップ
8月2日(水)~5日(土)、7日(月)、9日(水)、10日(木)、12日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

8月6日(日)、11日(祝)、13日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

8月11日(金・祝)
ワークショップ 『うちわを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

8月12日(土)、13日(日)
イベント 今昔館で夏祭り ― 楽市町家 ―

町家の店先に町家衆手作りのかわいい商品が並びます
13時~16時

8月13日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

8月17日(木)
イベント 夏休み まちなみ探偵団

江戸時代の大坂の住まいやくらしのヒミツを極秘調査して、今昔館を訪れている外国の人に見つけたヒミツを伝えてみよう!
10時~16時30分
対象:小学5・6年生(安全のため、保護者の送迎をお願いします。)
定員:20名(申し込み多数の場合は抽選)
お申し込みについては「住まい・まちづくり・ネット」をご覧ください。
※いただいた個人情報は今回のイベント以外の目的には一切使用いたしません。
※参加者決定後、お申し込み時にご記入いただきましたご住所に、参加証及び詳細をお送りします。
※昼食・飲み物は、各自ご用意ください。

8月19日(土)
町家衆イベント ワークショップ 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30~15:00

8月20日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
      協力:大阪市役所茶道部
13時~15時

ワークショップ 『かわり屏風を作ろう』
①13時~ ②14時~
当日先着各回10名、参加費400円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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